なつかれくさ かるる
夏至-乃東枯

新暦6月20日 から6月24日
公開日:2017年6月21日

 夏枯草(かこそう)が枯れる頃になりました。夏枯草は「なつかれくさ」ともいい、靫草(うつぼぐさ)の別名です。乃東で「だいとう」とも読み、これは古名にあたります。
 靫草はシソ科の多年草で、夏に紫色の花が咲きます。名前の由来は、花穂の形が弓の矢をおさめる靫に似ているためについた名で、別名の夏枯草は、夏に花が終わった後に花穂が枯れて黒く変色するからなのだとか。この花穂は漢方薬となり、抗炎症、利尿作用があるそうです。
 この時季、夏の草花がどれも元気よく繁茂するなか、冬に芽を出した靫草の花穂が黒く枯れたように見え、そんなことからも季節の小さな変化が感じられます。またこの候は夏至の初候にあたり、冬至の初候「乃東生」(なつかれくさしょうず)に対応する候となっています。

茶の趣向・心配り

掛物

【夏草や兵どもが夢の跡(なつくさや つわものどもが ゆめのあと)】

 松尾芭蕉が詠んだ、非常に有名な俳句です。
 芭蕉が奥州平泉を訪れた際、古戦場跡を通りました。そこはかつて戦場でしたが、芭蕉の目に映るのは夏草が青々と生い茂る自然ばかりだったそうです。今となっては既に戦の気配はない草合いに、芭蕉は戦場の姿を想像しました。刀や槍が打ち合う音や、野ざらしの死骸もあったことでしょう。
見えずとも確かにあった過去と今の夏草を見比べ、「諸行無常」を詠んだのがこの句になります。
 夏枯草(なつかれくさ)の時季に合わせればいっそうのこと、無常のこころが染み込んでくるのではないでしょうか。

季節のお菓子、食べ物

【早苗(さなえ)きんとん】

 苗代(なわしろ)で育てて、本田へ移し植える頃のみずみずしい稲の苗のことを早苗といいます。早苗月は旧暦5月の異称です。この早苗にゆかりの和菓子があります。
 青田の早苗を連想させる浅緑色のきんとんの上に錦玉で朝露を表わしたものや、小豆の漉し餡の周りに裏漉しをした緑の餡を植え付けて田植えの終わった早苗を表現したもの、小豆餡のきんとんで黒土の田んぼを表わし、その上に緑色のきんとんの苗がちょんちょんと植えられているもの、など様々です。瑞穂の国の風景を写した、季節感たっぷりの菓子ですね。

【らっきょう】

 中国原産で、平安時代に日本へ伝わったとされ、ニンニク、ネギ、ニラと同じユリ科の多年草です。主要な産地は、鹿児島の吹上砂丘、鳥取砂丘などで、寒暖の差が大きく水はけのよい土地が栽培に適しています。旬は初夏から夏にかけてです。
 栄養面では、カリウムと硫化アリルを豊富に含みます。カリウムはナトリウムの排泄をうながし、高血圧症予防に役立ちます。硫化アリルは独特のにおいのもとでもあり、ビタミンB1の効果を高める作用と抗菌作用があるそうです。また硫化アリルは代表的な発癌抑制物質の一つでもあり、らっきょうを毎日一粒づつ食べれば肉体疲労の解消と、がん予防にも効果あるとか。
 らっきょうは甘酢漬けが一般的ですが、しょうゆ漬けやはちみつ漬け、ピクルスなどでもおいしく食べられます。ちょっとかわった料理法として天ぷらにする方法も。ほのかな甘みとホクホク感が絶妙です。

茶趣・行事ごと

【伊雑宮御田植祭(いざわのみやおたうえまつり)】

 国の指定重要無形民俗文化財に指定されている伊勢神宮内宮の別宮「伊雑宮」の祭です。毎年6月24日に開催されます。
 平安期の古式ゆかしい衣装を身にまとい、田楽に合わせての田植、青年達の「竹取行事」「踊込み行事」が繰り広げられます。この田植祭は千葉の香取神社、大阪の住吉大社とともに日本三大御田植祭の1つに数えられ、平安時代末期から鎌倉時代初めころより続くと伝えられる歴史ある神事です。

【夏至(げし)】

 この日、北半球では昼の時間が一番短くなります。2016年の夏至は、6月21日です。
 昼間が最も短い冬至に比べると、時間差はなんと5時間近くにもなります。なお日本では、この時季は梅雨の真っ最中。そのためあまり実感が持てないことが多いのですが、太陽のパワーが一番強まる日として、この日の朝日を拝む信仰や、祝いの火祭りを行うなどの行事が世界各地にあります。
 最近では短い夜に電気の明かりを消して、ろうそくの光だけで過ごそうというキャンドルナイトのイベントも行われるようになりました。このイベントを通して省エネルギーや環境問題などを考えよう、という催しです。たまにはキャンドルの揺らぐ光を眺めながら、ゆっくりと時を過ごすのも楽しいのでは。

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