こうがん きたる
寒露-鴻雁来

新暦10月3日 から10月7日
公開日:2018年10月8日

 雁が北から渡ってくる季節になりました。4月の「鴻雁北」と対になる候です。
 この候は二十四節気の「寒露(かんろ)」の初候に当たります。寒露とは、草花に冷たい露が宿るという意味で、言葉通りに秋の深まりが感じられるようになってきました。この時季、秋の移動性高気圧におおわれた空は抜けるように青く澄んでいます。農家では収穫の秋、そして読書に、スポーツに、芸術に、と秋は何かに挑戦するのには最適の日和が続きます。そんな日には夜空もまた澄み渡り、月の光りの明るさに驚かされたりも。春の朧月夜とはまた一味違う、冴え冴えとした月の光の下、月光浴など楽しんでみてはいかがでしょう。

茶趣・行事ごと

【鹿の角きり】

 今では奈良公園の秋の風物詩となっているのが「鹿の角きり」。江戸初期の寛文年間に始まりました。人への害を防ぐために雄鹿の角を切るという行事は、鹿と人との長い共生の歴史の中でうまれた、奈良ならではの伝統行事といえます。
 角きりは初め奈良奉行の手によって奈良町の袋小路などで行われていましたが、明治24年からは春日表参道で行われるようになりました。さらに昭和4年には春日大社内に新しい鹿苑が完成し、その一部に角きり場も設けられ、今日に至っています。
 この行事は、はっぴ姿の勢子(せこ)といわれる人たちが角きり場に鹿を追い込んでつかまえ、春日大社の神官が角を切るという、勇壮な行事です。2016年の角きりは、10月8日から10日までの3日間行われます。

季節のお菓子、食べ物

【山づと】

  薯蕷皮で漉し餡を包んだ棹物菓子です。餡の中には栗が入っています。「山づと」の「つと」というのは漢字では「苞」と書き、藁(わら)などで包んだもの、またはその土地の産物とか旅の土産、という意味があるそうです。つまり山づとは山からのお土産ということになるようです。これは秋の山の幸、栗が入ったお土産ですね。深まる秋の情趣あふれるお菓子です。

【蕪(かぶ)】

 蕪は地中海沿岸や南ヨーロッパ原産の、キャベツや白菜などと同じアブラナ科の野菜です。晩秋から初冬にかけてが旬です。
 蕪は優秀な食品で、白い根の部分も、葉の部分も食用になりますが、蕪といえば根の部分のことをいうのが一般的です。この根にはでんぷんの消化を助けてくれるアミラーゼなどの酵素が多く、整腸作用があります。白くきれいな上にアクもないため、浅漬けや甘酢漬けなどにしていただきます。また、すりおろして魚の切り身などと一緒に蒸した「かぶら蒸し」は寒い冬に喜ばれるご馳走ですね。
 ところで、実は蕪は栄養的には根よりも葉のほうがすぐれているのだとか。ビタミン類やカルシウム、鉄、食物繊維などが豊富で、骨粗しょう症の予防や免疫力強化に効果があるようです。ぜひ、葉っぱも捨てないで、炒め物やみそ汁の具などで美味しくいただきましょう。

茶花、季節の植物

【竜胆(りんどう)】

 リンドウ科の多年草です。茎は高さ20~60㎝ほどで、9~11月に青紫色や紅紫色の筒状の鐘形の花を上向きに開きます。本州から九州の草原や山地によく見られる花です。名前の由来は、中国名の竜胆を音読みしたリュウタンが、なまってリンドウになったのだとか。そのもとの竜胆とは、根茎と茎に強い苦みがあり、その苦さが「竜の肝のようだ」とたとえられたことによる名前だそうです。苦い根は漢方薬の原料になり、胃薬などとして利用されています。
 茶花では、秋の季節にふさわしい趣のある花として一種活にしたり、または根締にも用いられます。

茶の趣向・心配り

掛物

【昨夜一声雁(さくや いっせいのかり)】

 「昨夜一声雁、清風万里秋(せいふう ばんりのあき)」と対句になっています。これは、昨夜一声聞こえた初雁の鳴き声に秋の到来を感じ、ふと感じるさわやかな風にも秋を感じる、という意味です。中国の宋代の魏慶之(ぎけいし)が著した『詩人玉屑(しじんぎょくせつ)』の中の言葉になります。
 いつまでも残暑が続いて暑い暑い思っていたけれど、ちょっとした身の回りの自然の変化に、いつの間にか秋が来ていたことにはっと気付く、そんなひと時は私たちの日常にもままあることですね。

 この候の名にあるように雁がつく言葉がいくつかあります。秋に初めて北から渡ってくる雁のことを「初雁(はつかり)」といいます。雁が列になって飛んでくるさまを「雁行(がんこう)」とか「雁の棹(かりのさお)」といい、空から舞い降りてくるさまを「落雁(らくがん)」、雁の鳴き声のことを「雁が音(かりがね)」というなど、雁にまつわる言葉は数々あります。雁が渡ってくると秋の深まりを感じ、どこかものさびしげな気配が漂うようです。

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