きりぎりす とにあり
寒露-蟋蟀在戸

新暦10月13日 から10月17日
公開日:2018年10月18日

 蟋蟀は平安時代には「きりぎりす」と呼ばれていましたが、現在の「こおろぎ」のことだそうです。そろそろ秋の虫が鳴く声が戸口で聞かれる時季ですね。
 ところで、秋の虫と聞いてどんな虫を思い浮かべますか。キリギリス、コオロギ、鈴虫、くつわ虫、松虫、邯鄲(かんたん)。特に松虫や邯鄲となると、名前は聞いたことがあっても、その声や、さらには姿まで見たことがある方は今ではごく少数なのではないでしょうか。古来より日本人は秋の虫の鳴き声に親しんできました。平安時代のころから「虫聞き」といって野山に出て虫の声を聞いて楽しむ、というみやびな遊びが始まっていたのだそうです。
 秋も深まってきたこの頃、たまには昼間の喧騒をわすれて、夜の窓辺で虫の声に耳を傾けてみてはいかがでしょう。

茶趣・行事ごと

【菊供養(きくくよう)】

 東京、浅草の浅草寺では、毎年10月18日に「菊供養」が行われます。この行事は明治のころから始まったということですが、この日浅草寺では菊の花を持ってお参りに行き、すでに供えられている菊の花を一本持ち帰り、これを陰干ししたのちに枕の下に敷いて寝ると長生きができるなど御利益があるとされ、当日は多くの参拝者でにぎわいます。

【鞍馬の火祭】

 鞍馬の火祭は毎年10月22日に行われる京都、鞍馬山の山腹にある由岐(ゆき)神社の例祭です。当日の夜、鞍馬寺の参道数か所に松や樅の根を束ねた大きな松明(たいまつ)が立てられ、家々の前にも篝火(かがりび)が焚かれます。若者たちが松明に火をつけたものを担ぎ、「サイレイヤ、サイリョウ」と掛け声をかけながら参道を練り歩く、勇壮で豪快な祭りです。鞍馬の火祭は広隆寺の牛祭、今宮神社のやすらい祭と並んで京都三大奇祭のひとつなのだとか。
 この日、平安神宮では「時代祭」が行われ、このふたつの祭は京都の秋を彩る風物詩となっています。

季節のお菓子、食べ物

【栗ようかん】

 ごろごろと大きな栗の入った栗ようかんは、ずっしりとした重みがあり満足感に溢れる一品ですね。ようかんといえばお店で購入するイメージが強いかもしれませんが、実はこしあん・粉寒天があれば案外簡単に作ることができるお菓子です。基本的には材料を煮て溶かし、型に入れて固めるだけ。バレンタインに作るチョコレート菓子のようなものです。
 栗を拾って甘露煮に。そしてさらにひと手間かけて栗ようかんに、などというのも季節感ある粋な菓子になるのではないでしょうか。

【薩摩芋】

 薩摩芋は中南米原産のヒルガオ科の作物です。コロンブスがヨーロッパに持ち帰って以後、世界各地に広がり、日本へは17世紀に伝わったそうです。甘藷(かんしょ)、唐芋(からいも)ともいいます。薩摩芋の名前は、日本に伝えられたのちに薩摩地方でよく栽培されたため、この名前が付いたようです。やせた土地でもよく育ち、江戸時代には飢饉のときに薩摩芋が救荒作物として注目され、全国に栽培が広まったのだとか。
 栄養面では、薩摩芋のビタミンCは加熱による損失が少ないのが特徴です。このビタミンCはコラーゲンの生成を助ける作用があり、美肌効果が期待できます。また食物繊維ではセルロースを多く含み、便秘の改善や大腸がん、動脈硬化、糖尿病などの予防にもなるようです。
 秋のこの時季の薩摩芋の食べ方といったら、やはり焚火で焼いた焼き芋ですね。ゆっくり加熱するとアミラーゼという消化酵素の働きで糖分が増して美味しくなるそうです。70度前後に保つのがコツなのだとか。

茶花、季節の植物

【紫式部(むらさきしきぶ)】

 紫式部はクマツヅラ科の落葉低木で、高さは3mほどになります。日本各地の山野に自生しています。初夏、葉の付け根に淡紫色の小花をたくさんつけ、秋には紫色の丸い実を結びます。
  『源氏物語』の作者・紫式部とのつながりは直接はないようですが、紫色の美しい実を付ける植物は珍しいことから、もともとは実紫(みむらさき)と呼ばれていたものが、江戸時代に植木屋が販売しやすいように紫式部という名を付けて、それが広まった、との説もあるようです。
 茶花としては、秋に美しい紫色の実がなったものを用い、他の茶花と取り合わせて活けるとよいでしょう。

茶の趣向・心配り

掛物

【江月照松風吹(こうげつてらし しょうふうふく)】

 静かな川面に月が浮かび、その光はあたりを照らしている。川岸の山の松林にはさわやかな風が吹き渡っていく、そんな美しい情景を表わした言葉です。中国・唐代の『証道歌(しょうどうか)』という、禅の思想を歌曲の形式でまとめた、禅の入門書的な書物の中の言葉になります。

茶碗

【柿の蔕(かきのへた)茶碗】

 高麗茶碗の一種です。鉄分が多くざんぐりとした土味で、透明な釉薬が薄くかかっています。釉肌は渋く暗褐色で侘びた趣きがあります。口縁がやや端反りぎみで、腰のところに段があり、比較的平たい形です。名前の由来は茶碗を伏せた姿が柿の蔕に見えることから名付けられたということです 
 名残りの季節に好まれます。

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