つばき はじめてひらく
立冬-山茶始開

新暦11月2日 から11月6日
公開日:2018年11月7日

 山茶花(さざんか)の花が開き始める季節となりました。この候名では山茶と書いて「つばき」と読みますが、実際は「さざんか」のことを指しています。
 山茶花はツバキ科の花木で、初冬のこの時季に花を開きます。この頃に降る雨のことを山茶花時雨(さざんかしぐれ)という言葉で表すことがあります。冬ざれの花が乏しい季節に、椿とよく似た赤やピンクに咲いた山茶花の花を冷たい雨が濡らすと、花の色がいっそう際立って見えるようですね。

茶趣・行事ごと

【炉開き】

 11月初旬、特に京都では旧暦10月の最初の亥の日に炉を開く慣わしがあり、茶家の多くではこの頃に炉開きを行います。10月の風炉の名残の気分が一新され、露地も席中もすべて改められるので、開炉は「茶の湯の正月」「茶道の新年」とも言われます。
 開炉の時には取り合わせに織部のものを一つ取り入れると良いと言われています。茶碗や香合などろいろありますが、菓子に織部饅頭の取り合わせもいいですね。

11月11日 一の酉、11月23日 二の酉

【酉の市(とりのいち)】

 11月の酉の日に、東京やその周辺の関東地方を中心に大鳥神社(大鷲神社、鷲神社)で行われる縁日です。
 各地の鷲神社は神話に登場する日本武尊(やまとたけるのみこと)をまつる神社で、東国の敵を平定する旅の途中で亡くなった日本武尊の魂が白い鳥になって飛んで行ったと伝えられ、氏子たちは鶏を神の使いであるとして大切にしてきたのだそうです。特に東京都台東区千束の浅草鷲神社(あさくさおおとりじんじゃ)の祭りが有名で、おかめの面、扇、大判小判、宝船などを付けた縁起物の熊手を売る露店が立ち並んでにぎわいます。
 なお熊手には、その年の福得をかき集めるという意味があります。大きな熊手でたっぷりと、人にわけられるくらいの福をかき集めてみてはいかがでしょう。

季節のお菓子、食べ物

【亥の子餅】

 亥の子餅は白餡と粒あんの二重餡を、羽二重粉の求肥に白ごまを混ぜて包んだ餅菓子です。 中国では旧暦10月を亥の月といい、その月の亥の日の亥の刻(午後10時頃)に餅を食べると万病を除くとされていました。平安時代にその慣習をとりいれ、宮廷で行事として確立されました。後に健康を祈る行事として武家などにも広まるようになります。
 茶の湯の世界ではこの日を炉開きの日としており、茶席の菓子 として亥の子餅が用いられます。

【山芋】

 山芋は山の芋ともいい、ヤマノイモ科の蔓性の多年草で山野に自生しています。私たちが普段目ににするのは中国原産の山の芋で、いくつかの品種があり栽培種が市場に出回っていますが、中でも一番馴染みがあるのが長芋ですね。
 山芋はでんぷん分解酵素をたくさん含んでいるので、新陳代謝が活発になり、疲労回復や滋養強壮に効果が期待できます。また、山芋の特徴の、あのヌルヌルとしたぬめりはムチンという成分で、この成分には粘膜を潤し、保護する働きがあります。食物繊維も多いので便秘解消にも役立ちます。
 ところで山芋といえば、イモ類のなかで唯一生食できるイモです。熱による栄養成分の損失を気にせずに食べることができるのは大きなメリットです。すりおろしてとろろや山掛けで食べるのが一般的ですが、千切りにして酢のものやサラダにするとしゃきしゃきとした食感も楽しめます。

茶花、季節の植物

【錦木(にしきぎ)】

 ニシキギ科の落葉低木で、高さ3mほどになります。北海道から九州、北東アジアの山野に自生しています。枝は緑色で、コルク質の矢羽根のような形の翼が枝につくのが特徴です。5~6月ころに淡緑色で直径約5mmほどの小さな花をつけます。秋に美しく紅葉し、その様子が野山に錦を織りなしたように見えることからこの名付がけられたということです。
 茶花としては、色づいた葉の風情を、美しい果実とともに楽しむために、まず枝ぶりや葉を吟味して選ぶのが肝要です。炉開きには白玉椿などが用いられることが多いかと思いますが、そこに添える照葉として用いてみてはいかがでしょう。

茶の趣向・心配り

香合

【玄猪包】

 銀杏の葉と紐で包んだものを「玄猪包」と言いますが、現代ではなかなか見かけることがない言葉ですね。これは平安時代の行事「玄猪の儀」で下賜された包みの意匠です。玄猪の儀では亥の子餅を家臣へとふるまうしきたりがありました。その時の包みがこのように飾り付けられていたのです。
 玄猪の儀では、相手の健康や繁栄をお祈りします。亥の子餅とあわせて茶席に取り入れ、古の行事を模してみても面白いかもしれませんね。

 二十四節気の立冬に入りました。冷え込みが進み、そこかしこに冬の気配が感じられるようになりました。立冬の日の朝を表現した季語に「今朝の冬」というものがあります。
 ついに冬がやってきた、と身も心も引き締まるような気持ちになる言葉ですね。

全てのお便りの一覧へ
このお便りの先頭へ

このお稽古にしおりをつけました。
しおりのページでまとめて見れます。

残りのしおり数を増やすには?