あし はじめてしょうず
穀雨-葭始生

新暦4月21日 から4月25日
公開日:2016年5月5日

 水辺で葭(あし)が芽吹き始める時季のことです。
 アシはイネ科の多年草で、漢字では葦とも蘆とも芦とも書くことがあります。根茎は地中をはい、沼や川の岸に大群落をつくります。高さは2~3メートルになり、茎は堅い円柱形で、ササに似た細長い葉が互生し、秋にはススキのような穂が出ます。若芽は食用になり、茎からは簾(すだれ)がつくられます。「あし」の音が「悪し」に通ずるため「よし」と呼ばれることもあります。
 アシの新芽のことをの葦牙(あしかび)といい、アシの芽吹きには「角(つの)ぐむ」という言葉が使われることもあるそうです。それは春に水辺に出てくるアシの新芽が牙のようだからと葦牙、またアシの芽が角のように出はじめるから角ぐむ、ということとか。どちらも新芽の力強さを感じさせる言葉ですね。
 この候は二十四節気の穀雨の初候にあたります。穀雨とはたくさんの穀物を潤す春の雨が降る頃のことをいいます。春雨がしとしとと大地を潤し、野山や水辺の植物たちが日増しに緑を濃くしていく、そんな季節がやってきました。

茶の趣向・心配り

掛物

【江国春風吹不起(こうこくのしゅんぷう ふきたたず)】

 これは「江国春風吹不起、鷓鴣啼在深花裏」(こうこくのしゅんぷう ふきたたず、しゃこはないてしんかりにあり)と対句になっています。「江国」というのは中国・揚子江のほとりのことです。そこには春になると、なんとも柔らかな風が吹くのだとか。そのそよ風の中、シャコ(キジに似た鳥)が花かげで美しく鳴いている。そんな、のどかな春の情景をあらわした句で、出典は中国・宋時代の書物『碧巌録』とされています。
 春のうららかな空気感が伝わってくるようです。

香合

【花喰い鳥(はなくいどり)】

 鳥が花の枝をくわえている姿を模した、とても愛らしい形の香合です。
 “花喰鳥”は装飾文様として歴史が古く、奈良時代の正倉院御物などにも見ることができます。由来を遡るとペルシャの代表的な図柄のひとつで、鳥が真珠や色帯をくわえている柄が「権威の象徴」として貴ばれていました。それが中国(唐)へと伝わり、中国文化と融合する際にくわえているものが花枝へと変化しました。さらにそれを遣唐使が日本へと伝え、現在のような意匠として残されています。
 ところで「鳥が枝をくわえている姿」というと、ハトがオリーブの枝をくわえている姿のほうが広く周知されているかもしれません。これは旧約聖書の「ノアの箱舟」に現れる希望と平和の象徴としてのハトをモチーフとしており、成立年代は3000年前とも。ペルシャモチーフの原型がこれであるともされており、そこから鑑みると本当に永い歴史をもった図柄だといえますね。

茶花、季節の植物

【枝垂桜(しだれざくら)】

 バラ科の落葉高木です。「江戸彼岸」の変種で、枝が糸のように長く垂れ下がる品種をいいます。枝いっぱいに咲いた花が、静かに風に揺れる様は柔らかな風情を感じます。京都・醍醐寺の枝垂れ桜は豊臣秀吉が愛でたことでも有名です。 

季節のお菓子、食べ物

この時季のお干菓子には晩春らしく、有平糖の「稚児桜」「卯の花むすび」などはいかがでしょう。

【稚児桜(ちござくら)】

 有平糖を紅白のねじりで染め分けて丸め、その真ん中をくぼませた愛らしい形をしています。

【卯の花(うのはな)むすび】

 緑と白の有平糖のお菓子です。晩春から初夏に咲く卯の花(別名:うつぎ)の、白い小さな花と緑の若葉が連想される、爽やかなイメージのお菓子です。 

茶趣・行事ごと

【四つ頭茶会】

 京都建仁寺において開山栄西禅師の生誕を祝って毎年4月20日に催される茶会です。
 栄西禅師は中国から茶の種を持ち帰り、日本に喫茶の風習を広めたことで知られています。その誕生日にひらかれる四つ頭茶会は、茶道の原形とされる禅院茶礼の伝統を今日に伝えるものといわれています。
 四つ頭とは中国の禅寺の接客の形で、栄西の画像と龍虎の図の三幅対を正面に掛けた方丈に、正客(頭)4人にそれぞれ8人の相伴客がついて席に入ります。まず開山禅師への焼香、献茶が行われ、ついで、4人の供給僧(くきゅうそう)によって抹茶の入った天目茶碗と菓子が客に配られ、正客から順に茶碗に湯をついで茶を点てて回ります。
 室町初期にはすでにこの種の茶礼が行われていたということで、当時の禅院の茶礼を今に伝える興味深い茶会です。

【聖霊会(しょうりょうえ)】

 毎年4月22日、聖徳太子の命日を偲んで、太子と縁の深い大阪の四天王寺で行われる大法要のことをいいます。特に半日をかけて行われる舞楽法要は、日ごろ見る機会のない珍しい舞や演奏が見られるため、毎年多くの観客でにぎわいます。千四百年の歴史を持つ聖霊会は、法要と舞楽が一体となった古の大法要を今に伝え、国の重要無形民俗文化財の指定を受けています。豪華絢爛な絵巻を彷彿とさせる舞楽が無料で鑑賞できますので、一度訪れてみてはいかがでしょう。

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