こくもの すなわちみのる
処暑-禾乃登

新暦8月29日 から9月2日
公開日:2018年9月2日

 田んぼで稲が実り始める頃になりました。禾は音読みで「か」、訓読みで「のぎ」と読みます。禾とは稲のこと。または、稲・麦・粟(あわ)などの 穀物の総称のことを指します。あの漢字の「のぎへん」の禾ですね。
 「実るほど首を垂れる稲穂かな」ということわざがあります。稲が実を熟すほど穂が垂れ下がるように、人間も人格者ほど謙虚だということのたとえです。この時季はことわざ通りにずっしり実った稲穂が、頭を重たげに垂らして風に揺れている光景をよく目にします。それを見ると秋の到来を感じ、また瑞穂の国の豊かさを実感するのは、やはり私たち日本人の感性ゆえなのでしょうか。

茶趣・行事ごと

【少庵忌(しょうあんき)】

 千家二代、千少庵(1546~1614)は安土桃山・江戸前期の茶人です。利休の後妻宗恩(そうおん)の子で、千道安の義理の弟にあたります。名前は宗淳で、号が小庵です。利休自刃後は会津若松の蒲生氏郷(がもううじさと)のもとに身を寄せていましたが、のちに徳川家康、蒲生氏郷らのとりなしにより秀吉に許され、京都の本法寺前に屋敷を与えられます。ここで、利休がもと京都大徳寺の門前に建てた茶室、不審庵を継いで、千家の再興に尽力しました。晩年は洛西の西芳寺に隠棲したとも伝えられるのだとか。少庵の茶は典雅で柔らかな茶風といわれています。

【くしの日】

 9月4日はくしの日です。くしを大切に扱い美容への意識を高める目的で1979年に全国美容週間実行委員会が制定しました。9月4日にしたのは9(く)4(し)の語呂合わせですね。この日から1週間を「美容週間」として、美容のすばらしさを広く社会にアピールする様々な活動が全国で行われます。

季節のお菓子、食べ物

【梨】

 梨はバラ科の落葉高木です。古くから栽培されてきた果物の一つで、弥生時代の遺跡から種が出土する他、奈良時代の書物にも記されています。私たち日本人には比較的馴染みのある果物ですね。
 梨は約90%が水分で、甘く美味しい果汁にはリンゴ酸、クエン酸といった酸味も適度にあります。水分補給になりますし、夏の疲れがまだ残っている体の回復にも役立ちますね。また、カリウムを比較的多く含み、アスパラギン酸も含むため、利尿作用や体内の代謝をととのえる働きが期待できます。
 さらに、梨にはたんぱく質を分解する酵素があり、肉類の消化を助けてくれます。繊維質の少ない肉料理の付け合わせや、食後のデザートにおすすめです。

【月の雫(つきのしずく)】

 名月を思わせる菓子として、山梨名産の葡萄を使った果物菓子「月の雫」が存在します。
 甲州産の葡萄を生のまま、一粒づつ摺り蜜の衣をつけて純白に仕上げます。生の葡萄を使うため、販売されるのは9月から翌年の3月頃までの期間限定のお菓子です。山梨県では複数の菓子店で作られている山梨銘菓です。
 この時季、ことに美しく感じられる月の光の、白い一しずくを表した風情あるお菓子です。

  ・摺り蜜……ザラメを溶かして練り、細かい結晶を作り出したクリーム状の白い蜜

茶花、季節の植物

【釣鐘人参(つりがねにんじん)】

 キキョウ科の多年草です。日当りのよい山野に生え、草丈は高さ60~90㎝になります。夏から秋にかけて、青紫色の釣鐘形をしたかわいらしい花を下向きに咲かせます。根を乾燥させたものは漢方で沙参(しゃじん)といって、去痰(きょたん)剤として利用されています。また、春の若芽はトトキとよばれ、山菜としても親しまれています。釣鐘人参の名前の由来は、花が釣鐘形で、根が太く朝鮮人参に似ていることによるそうです。また、花の形から、地方によっては風鈴草(ふうりんそう)だとか提灯花(ちょうちんばな)といった呼び名もあります。
 茶花としては、野趣ある花なので、気軽な籠花入などに活けるとよいでしょう。

茶の趣向・心配り

掛物

【月白風清(つきしろく かぜきよし)】

 秋は月にまつわる故事が頻繁に用いられます。
 この言葉は「月が白く、こうこうと輝いている。そこにさわやかな風が吹いてきた。その風によって、更に月の美しさが増してきた」といった意味です。秋の澄んだ空気の中で、良く晴れた夜には月の光がことさら美しく感じられる、この季節にぴったりな情景が思い浮かべられますね。

香合

【青貝虫】

 秋の虫は鳴き声が美しいものが多いですね。その風情を思わせる青貝虫の香合などいかがでしょうか。青貝とは、夜光貝・オウム貝・アワビなどの貝殻を薄く削いで螺鈿加工したものです。真珠色の繊細な光沢が、見る角度によって様々な彩を味あわせてくれます。
 ところでこの「秋虫の鳴き声」を美しく感じるのは、日本人の特性なのだとか。外国の方が同じ鳴き声を聞いても、脳が単なる雑音として処理するという学説が存在します。これは鳴き声を美しいと思う文化や、音処理を右脳で行うか左脳で行うかといったところによる、とその学説は述べています。真偽のほどは不明ですが、日本でこの音が長く愛されてきたのは確かなこと。特に江戸時代には「虫売り」という職業があり、コオロギやスズムシなどといった美しい鳴き声をもつ虫の専門販売がされていました。それほどに、虫の鳴き声は秋の象徴だったのです。

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