みず はじめてかるる
秋分-水始涸

新暦9月28日 から10月2日
公開日:2018年10月3日

 田んぼから水を抜いて、乾かし始める頃となりました。
水田での稲作は水の管理がとても大切です。たとえば、田植えが終わり稲が成長する夏場、中干し(なかぼし)という作業があります。これは田んぼの水を抜き、土の中に酸素を入れて根の活力を高める効果があるそうです。また猛暑時には水温や地温の調整のために水の抜き張りを繰り返すこともあるのだとか。
 そしてこの時季、稲の穂は重くこうべを垂れ、農家では田んぼから完全に水を抜いて刈り取りの準備を始めます。いよいよ実りの秋がやってきました。

茶趣・行事ごと

【中置(なかおき)】

 そろそろ肌寒さを感じるようになったこの頃は、風炉も客の側に近づけ「中置」にします。
 中置とは、風炉を道具畳の中央に据えて、水指を風炉の左側(勝手付)に置いて点前を行うことを言います。時季としては10月の初めころから開炉まで、客に少しでもあたたかさを感じて欲しいと風炉を近づけ、冷たさを感じる水指はなるべく遠ざける、という亭主の客に対する心遣いの一つです。

【仙樵忌(せんしょうき)】

 田中仙樵(1875~1960)は大日本茶道学会の創立者です。京都府福知山市出身で千家十一代玄々斎門下の前田瑞雪に師事、のちに十三代圓能斎より皆伝を受けます。衰微していた茶道復興のために流儀の制約を超えて伝授物の公開講演を行うなど、茶道界に新風をもたらしました。昭和35年10月6日、86歳で逝去。この日、大日本茶道学会本部ではゆかりの「槐南軒(かいなんけん)」で供養の釜が掛けられます。

季節のお菓子、食べ物

【三嶋豆(みしままめ)】

 岐阜県高山市の銘菓です。地元産の青大豆を水に漬け、回転竈で糖蜜をまぶして作ります。砂糖をまぶした白い豆菓子と、青のりをまぶした緑色の豆菓子とが混ざっています。昔ながらの製法を守り続け、今も炭火で仕上げているそうです。三嶋豆の名前の由来は、明治の初めころ、三嶋治兵衛という人がこのお菓子を作ったことによるのだとか。
 このお菓子は、材料が砂糖・国産大豆と青海苔のみというとてもシンプルなもの。しかしながらその分大豆の香ばしさが際立ち、ついつい手が止まらなくなるおいしさです。

【新蕎麦(しんそば)】

 その年の秋に収穫した蕎麦の粉で作った蕎麦のことを新蕎麦といいます。
 蕎麦は5月中旬から6月中旬に種を蒔く夏蕎麦と、7月中旬から9月上旬に蒔く秋蕎麦があり、新蕎麦といわれるのは秋蕎麦のことです。
 蕎麦は痩せた土地でも寒い地方でもよく育ち、60日程度と短い期間で収穫できるため、古くから飢饉に備えて大切にされてきた作物です。
 栄養的には、良質なたんぱく質を多く含み、食物繊維も豊富なので、便秘改善や動脈硬化予防に効果が期待できるそうです。
 また、蕎麦には毛細血管を強くする栄養素・ルチンが含まれています。最近の研究で、蕎麦に含まれるたんぱく質が体脂肪の蓄積を抑える働きをすることがわかってきたとか。
 緑がかった美しい色の新蕎麦が出回るこの時季、味、香りともに格別な季節の味覚を存分に味わいたいですね。なお、新蕎麦は秋の季語です。

茶花、季節の植物

【葛(くず)】

 葛はマメ科の蔓性の多年草です。日本各地の山野に生え、茎は長さ10m以上にもなります。秋になると紫赤色の花が集まって咲きます。この花は秋の七草のひとつです。
 そして葛といえば、和菓子には欠かせない材料の一つ。地中で肥大している根を干して採った澱粉は葛粉で、くずきりなど和菓子が作られます。また、漢方薬の風邪薬・葛根湯の原料にもなります。
 茶花としては、蔓性を生かして、釣舟や掛花入によく似あう花です。

茶の趣向・心配り

掛物

【一葉翻空天下秋(いちよう くうにひるがえって てんかのあき)】

この言葉は「一枚の葉がひらひらと空に舞っているのを見て、秋が来たことを実感した」という意味です。中国、宋代の『宗鏡録(すぎょうろく)』という書物の中の言葉になります。落ち葉が空に舞う映像が目に浮かぶような、秋を感じる一文ですね。

 田んぼで稲刈りが行われる季節になりました。この頃をあらわした言葉に「稲の波」「稲穂の波」「穂波」などがあります。これは田んぼ一面黄金色に稲穂が実り、その上を風が吹気ぬけるさまを、田圃を海に、揺れる稲穂を波にたとえての言葉です。
 また、その稲にたくさんの雀が集まってくるさまを「群雀(むらすずめ)」「稲雀(いなすずめ)」などといいます。雀は街中でも見かける鳥ですが、田んぼでチュンチュンと鳴いている様は米を荒らすとわかっていても一際愛らしく見えます。

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