べにばな さかう
小満-紅花栄

新暦5月26日 から5月30日
公開日:2016年5月26日

 紅花の花がさかんに咲く頃のことです。
紅花はキク科の1年草で、アザミに似た形の、紅黄色の花を咲かせます。紅花の古名は末摘花(すえつむはな)といいます。花が開くと早朝に摘み取り、染物に用いることからこの名がつけられたのだとか。
 ちなみに末摘花といえば、「源氏物語」に登場する女性の一人がこの名をあてられています。作中で最も醜いと描写されていますが、純真な心から光源氏に最期まで添い遂げ続けた女性です。その彼女が光源氏に“末摘花”と呼ばれた理由は、「鼻が末摘花のように赤いから」です。平安の頃から、赤の染料として代表的であったことがうかがえます。
 この紅花の原産地はエジプトで、日本へは6~7世紀に中国から渡来したようです。江戸時代には口紅用に、また紅の染料としてさかんに栽培されました。紅花に含まれる赤の色素は大変少なかったため当時「紅一匁(いちもんめ)金一匁」といわれるほど高価なものでした。
 現在では山形県を中心に観光用に、また種子を絞ったサフラワー油の原料として栽培されています。
 紅花が畑に明かりを灯すように咲きだすと、あたりの木々はより一層緑を濃くしていきます。

茶の趣向・心配り

掛物

【遠山無限碧層々(えんざんかぎりなき へきそうそう)】

 この句は「堪対暮雲帰未合(対するに堪えたり暮雲の帰って未だ合っせざるに)、遠山無限碧層々」と、対句になっています。夕暮れの雲がまだ完全に山を包み隠してしまわないほんのわずかの間、薄明りの中に幾重にも連なる山々の峰が、ずっと限りなく遠くまで見えている、という意味です。
 瑞々しい季節の夕暮れ時の、雄大で美しい情景が目に浮かんで来るようです。

【源氏車蒔絵棗(げんじくるままきえなつめ)】

 源氏物語といえば、ということで源氏車蒔絵棗のご紹介です。源氏車とは別称を「御所車」とも呼ばれ、平安時代に使われていた牛車の車輪を図案化したものになります。棗にあしらわれている際は、大きな車輪がふたつ重なるように配置されていることが多いでしょう。棗の意匠は植物で表現されているものが多いので、モチーフとしては少し珍しいかもしれません。
 “源氏車”の名前から、源平合戦を表現したものなのかと勘違いしてしまう方もいらっしゃるのだとか。古典に触れていれば葵上と六条御息所の「車争ひ」などを思い浮かべてピンとくるかもしれません。作中前半のなかでも、息をのむ迫力のシーンです
 家紋や歌舞伎などでも頻繁に用いられる図案ですので、覚えておくと少し楽しい発見が増えますよ。

茶花、季節の植物

【野薊(のあざみ)】

 薊はキク科の一属で日本産だけでも80種、世界全体だと約200種もある花です。春咲きと秋咲きとがありますが、いずれも茶花に用いられます。
 その中でも野薊は薊の仲間の代表的な花で、本州以南の山野に広く自生しています。高さ60㎝~1mほどになり、葉は羽状に裂けて、とげが多くあります。野原などで比較的よく見かける花なので、手を伸ばしてチクッとやってしまった経験がある方も多いのでは。5~8月、紅紫色で愛らしい頭状花が咲きます。
 茶花としては、おもに根締めに適しています。

季節のお菓子、食べ物

 晩春から初夏にかけて、藤の花が薄紫や白色の長い花序を垂らして咲く様は、優雅な趣がありますね。その零れるような咲き方と色合いから、古くより愛されてきた花のひとつです。特に平安時代において「紫」は高貴な色とされており、紫色の花は文学作品などに好んでとりあげられています。源氏物語で永遠の女性とも表される「藤壺の女御」は、その名の通り藤の咲く庭が見える殿舎に住んでいたのだとか。
 その藤を和菓子で表現したものがあります。 

【藤の花】

 長く愛されてきたためかその高貴さ故か、藤の花の銘をもつ和菓子は多数存在します。
 例えば、薄い藤色に染めた求肥皮で白餡を包み、少しねじって小豆の粒をつけたもの。かるかん風の棹物で、中心に緑の羊羹地、小豆を花に見立てて散らして仕上げたもの。しんこに小豆粒を散らしたものなど、いずれも紫を前面に推しだすというよりは、そっとした彩に風雅な趣向を感じるお菓子です。

【アスパラガス】

 南ヨーロッパ原産のユリ科の多年草です。地下の根茎から毎春高さ 1m内外の茎を出し、若い茎は食用になります。ヨーロッパでは紀元前から栽培されていたそうです。
 旬は春から初夏です。国内の主産地は北海道、長野などで、栽培法のちがいによってホワイトとグリーンの2種類があります。発芽後に盛り土をして栽培するのがホワイトアスパラガス、そのまま日にあてて育成するのがグリーンアスパラガスです。
 栄養的にはホワイトよりもグリーンのほうがすぐれていて、たんぱく質、ビタミン、ミネラルをバランスよく含んでいます。とくに体内でアスパラギン酸というアミノ酸にかわるアスパラギンを多量に含むため、滋養強壮、体力回復、そして美肌効果も期待できるのだとか。調理はゆでる方法が一般的ですが、水溶性ビタミンを失ってしまうので、焼いたり揚げたりといった加工がおすすめです。
 最近ではメキシコやアメリカからの輸入物も多く、四季を問わず店頭に並ぶようになりましたが、産地の露地物が出回る5~6月頃に、採れたてのものをいただくのが一番おいしいですね。

茶趣・行事ごと

【長良川鵜飼(ながらがわうかい)】

 長良川鵜飼は、毎年5月11日~10月15日までの期間中、中秋の名月と増水時を除いて毎夜行われます。鵜は黒い毛におおわれた大型の水鳥で、水に潜って魚をとらえます。鵜飼は鵜匠がその習性を利用し、鵜をあやつって魚を捕える漁法です。およそ1300年の歴史があり、織田信長や徳川家康など時の権力者たちに保護されてきました。
 長良川の鵜匠は6人で、日本で唯一皇室御用となっています。正式な職名は宮内庁式部職鵜匠といい、代々世襲で親から子へとその技が受け継がれているそうです。
 また、長良川の鵜飼用具一式122点は国の重要有形民俗文化財に、長良川の鵜飼漁の技術は国の重要無形民俗文化財に指定されています。さらに、鵜匠が鵜をはげます「ホウホウ」という掛け声や舟べりをたたく音は「日本の音風景百選」に選ばれているということです。

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