しみず あたたかをふくむ
小寒-水泉動

新暦1月6日 から1月10日
公開日:2017年1月10日

 冷え冷えとした冬の間、水はキンと凍りつきます。しかしそれも寒い冬の間だけ。春の息吹が近づくにつれ、氷はゆるやかに融け始めます。“水泉”は文字通りに「泉」の意味であり、“動”の一字は「あたたかをふくむ」と読みます。この一字で暖かくなるにつれ動き始める水を表現しており、とても風流な読み方です。
 氷下で水が動き始める時期、それが「水泉動」。景色こそまだ冬であるものの、見えないところで確実に春への歩みが進んでいます。

茶の趣向・心配り

掛物

 新たな年を迎えて方々への挨拶が済み、実際に物事が動き始めるのがこの候のあたり。物事が動き出す時期だからこそ、上昇的な願いや発展への目標を込めた内容の掛物が適していると言えるでしょう。

【彩鳳舞丹霄(さいほうたんしょうにまう)】

 豪奢で晴れやかな光景を想起させる掛物です。“彩鳳”とは、中国の瑞兆「鳳凰」の事、“丹霄”とは朝焼けや夕焼けで紅く染まった大空の事です。鳳凰は五色の羽をもつとされており、天下泰平のおりに現れる幻獣だと伝えられています。鳳凰が雲ひとつない大空を羽ばたく様は、全ての人へと降り注ぐめでたさや幸福を表現しています。とにかく鮮やかでめでたい内容のため、1月に掛けると縁起が良い掛物です。出典:『五家正宗賛』

茶花、季節の植物

【水仙】

 凛とした立姿が美しく、正月前頃には咲きだしている寒さに強い花です。その耐寒性から「雪中花」という二つ名もあります。また水仙の英名は「ナルシサス」。これはギリシャ神話に登場する絶世の美少年の名前です。彼は泉に映った己の姿に見惚れてしまい、日々見つめ続けているうちに一輪の花へと変わってしまいました。その花に少年の名前「ナルシサス」がつけられ、自己愛「ナルシスト」の語源になったとされています。
 茶花としては戦国時代頃から記録が残っており、特に小堀遠州の掛けた茶会などに多く飾られています。小堀遠州といえば「綺麗さび」の茶趣を創り上げた茶人のひとり。水仙の楚々とした美しさが、遠州の心を打ったのかもしれません。
  ・小堀遠州(1579~1647)……備中松山藩第二第藩主であり、のちの近江小室藩初代藩主。小堀政一ともいう。武家茶道「小堀遠州流」の祖。茶道具に和歌や古典、王朝文化などからとった銘をつけ、「綺麗さび」という美意識を形成した。

季節のお菓子、食べ物

【さざれ石】

 日本国歌「君が代」にもおりこまれた「さざれ石」をテーマとした和菓子です。さざれ石とは小さく細かな石が年月をかけて集まり、欠片の隙間が埋まった事によりひとつの大きな岩となったものを指します。その成り立ちから特殊で縁起の良いものとされており、また永く続く意志の表れから物事の始めの頃合いに良いモチーフとなっています。

【水菜】

 冬が旬であり、青々とした色合いが美しい葉野菜です。シャキシャキとした歯ごたえが楽しく、それを保つためにもあまり熱を加えすぎない調理法が適しています。水菜といえばビタミンCを多く含んでおり、肉や魚の臭みを消す効果も持っています。鍋にたっぷりと水菜を入れてサッと火を通せば、具材の臭みがとれて栄養も満点。冬にみんなでいただきたい野菜です。

茶趣・行事ごと

【十日戎】

 “戎”とは商売繁盛の神様「恵比寿」さまの事。1月10日に関西の今宮戎神社、西宮神社、恵比寿神社などで恵比寿神を祀る祭礼が行われます。恵比寿さまといえば七福神の一柱。右手に釣り竿を、左手に鯛を抱えた姿として有名です。江戸時代以降の信仰としては、海神・水神、福の神としての側面も持っており、広く民衆に愛されている神様です。
 茶家では十日戎にあわせ、10日前後に釜が掛けられます。恵比寿にかけて、福耳の花入れや鯛絵をあしらった茶碗などが揃えられ、世の中の繁栄や商売繁盛を祈ります。

【鏡開き】

 正月に歳神様に供えた鏡餅を割り、家内で食する行事です。およそ室町時代頃に成立したといわれています。鏡餅は普通の餅より大きいものですが、刃物で切ってしまうのは不吉とされています。これは室町時代といえば武士の時代であり、刃を入れると切腹を想像させてしまうため。そのため、鏡餅は木槌や手で割るのですが、この“割る”という言葉も忌み言葉とされているため「開く」という言葉に言い換えています。
 ちなみに鏡餅は歳神様への供えもの。そのため歳神様の福が宿っています。松の内を過ぎると歳神様が帰ってしまうため、お見送りとして歳神様の餅をお福分けしていただきます。これにより、一年の無病息災が約束されるのです。

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