そうもく めばえいずる
雨水-草木萠動

新暦3月2日 から3月6日
公開日:2017年2月28日

 草木が芽吹き始める頃のことです。木々の枝先では徐々にふくらんできた新芽が開き始め、自然界にいのちの息吹きが満ち満ちていきます。
 木の芽が出る頃をあらわすことばに「木の芽時(このめどき)」というものがあります。このころ降る雨を「木の芽雨(このめあめ)」といったり、また地域によっては「木の芽起こし(このめおこし)」というところもあるとか。同様に木の芽時に吹く風のことを「木の芽風(このめかぜ)」といいます。古より人々は春を待ちわびて、一雨ごとに芽吹く木々の小さな変化にも春の訪れを感じていたのですね。

茶の趣向・心配り

掛物

 この時季の掛物には、雛祭りにちなんで雛の絵や「柳緑花紅」などの掛物はいかがでしょう。

【柳緑花紅(やなぎはみどりはなはくれない)】

 緑のものを緑と、紅を紅と見ることは誰にでもできる。でも本当にそうだろうか、と徹底的に疑った後で見た柳の色と花の紅は、同じものでも最初とは全く異なって見えるものだ、という意味の『東坡禅喜集』の中の言葉です。
 一度否定し、模索した上で再度見た柳はいっそう緑が美しく、花はさらに紅に輝いて見えるといいます。その時初めて、人は柳や花の本当の美しさに目覚めることができる、という、奥の深い言葉ですね。
 
  ・『東坡禅喜集(とうばぜんきしゅう)』……中国・宋時代。宋代随一の文豪・蘇東坡(そとうば)の詩文中、禅に関するものを集めたもの。

茶花、季節の植物

【雪柳】

バラ科の落葉小低木で、樹高は1メートルから2メートル程あります。水はけのよい日なたを好み、関東地方の川沿いの岩の上などに自生しています。枝は細く、地面の際から郡出して弓なりに垂れ、葉は柳のように細くて小さいのが特徴です。葉が柳に似て、春に白い小花が枝上に並んで咲き、雪が積もったように見えることから雪柳の名が付きました。観賞用として庭や公園によく植えられています。こごめばな、こごめざくらなどの別名があります。
 茶花としては炉の季節には白い花を、風炉の季節になっても若芽や青葉を、また秋には紅葉した葉も用いられます。

季節のお菓子、食べ物

【引千切(ひちぎり・ひっちぎり)】

 3月といえば、まずは雛祭りですね。引千切は雛祭りにちなんだお菓子です。餅を引きちぎった素朴な形のお菓子で、平安の昔から宮中での祝儀に用いられた戴餅(いただきもち)に由来するという説もあるそうです。
 白・紅・緑の円形の餅や練り切りなどの一部分を柄のように引きちぎった形にし、中央をくぼませて丸めたあんなどをのせています。かつて京都では女の子が生まれると、これを婿方の家に贈る風習があったとか。子だくさんを意味し、子供の成長と幸運を祈る気持ちが込められており、関西を中心に近年では雛祭りには欠かせないお菓子となっています。

  ・練り切り……こしあんに求肥などのつなぎを加え、練り上げて作るもの。山芋を加えた薯蕷(じょうよ)練り切りなどもある。着色し、上生菓子として季節の風物を表すことが多い。

茶趣・行事ごと

【雛祭りの茶】

 3月3日の雛祭りには、子供たちをまじえて雛の茶を催すのはいかがでしょう。たとえば、掛物に立ち雛の絵、、釜は乙御前(おとごぜ)や色紙(しきし)地紋の釜、水指は供え物の菱餅にちなんで呉須菱馬(ごすひしうま)や雪洞(ぼんぼり)形のもの、茶碗は雛の絵や桃形の茶碗、香合には貝合わせの貝を用いたり、と趣向をこらし遊び心を持った道具組みで、春の一日を楽しみたいですね。
 子供たちがお茶に親しむ良い機会にもなりそうです。

【雛祭り(桃の節句)】

 女の子の健やかな成長を願うお祭りとして知られている雛祭りは、古くは上巳(じょうし)の節句といわれました。上巳とは旧暦3月初めの巳(み)の日のことで、古代中国ではこの日に人々が水辺に集まり禊ぎをする習わしがありました。それが日本へ伝わり、平安時代には上巳の日に紙で作った人形(ひとがた)で体を撫でて川に流す「上巳の祓え」が行われるようになりました。この習わしはやがて3月3日に女の子の健康を祈る雛祭りとなり、江戸時代には雛人形を飾る現在の形に近いものが出来上がったということです。
 旧暦では雛祭りの時季にちょうど桃の花が咲くことから、3月3日は別名桃の節句とも言われます。

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