すごもりむし とをひらく
啓蟄-蟄虫啓戸

新暦3月7日 から3月11日
公開日:2017年3月5日

 土の中で冬ごもりをしていた虫たちが、春の気配に目覚め、地上へ顔を出し始める頃のことをいいます。
 「蟄」には「冬ごもりのために虫が土の下に隠れる、とじこもる」の意味が、「啓」には「ひらく、開放する、(夜が)明ける」という意味があります。また虫とは人・獣・鳥・魚・貝以外の小動物のことをいい、今では多くは昆虫を指しますが、昔は蛇や蛙など様々な小さな生き物のことを含めて虫といっていたそうです。
この時季には、大地のぬくもりを感じとった生き物たちが、冬の長い眠りからようやく目覚め動き始めます。

茶の趣向・心配り

【釣釜(つりがま)】

 そろそろ炉の季節も終わりに近づいた3月から4月にかけて、好んで用いられるのが釣釜です。釣釜とは炉の中の五徳を取り外し、天井からつるしてかける釜のことをいいます。広間では鎖を、小間では竹の自在を天井から下げ、鎖や自在の鉤に釜鐶を通した弦を掛けて釜を釣ります。釜は筒形、棗形、鶴首、車軸など細身のものが適しています。竹の自在は、利休が農家の囲炉裏に使われていたものを、そのひなびた趣を愛して茶席に用いたのが始まりとされています。
 柔らかな春風がここちよいこの時季には、釣釜をかけてそのかすかな揺れに春を感じるのも、また風情があって楽しそうですね。

茶花、季節の植物

【黄梅(おうばい)】

 モクセイ科の落葉小低木です。茎は緑色で四角く、長く伸びると地面に付き、そこから根をおろします。日当たり、水はけのよい肥沃な土地を好みます。中国原産で中国名は迎春花といい、その名のとおり早春に葉に先立って花を開きます。名前に梅がつきますが、梅の仲間ではありません。花の形が梅に似ており、色が黄色なために黄梅と名付けられました。江戸時代に渡来し、鉢植え・生け垣などで楽しまれています。
 茶花で利用する時には、花の少なめな枝を釣舟とか掛花入に活けるとよいでしょう。根締めは、たとえば紅色の椿などはいかがでしょうか。

季節のお菓子、食べ物

【蓬餅(よもぎもち)】

 蓬のゆでた若葉を入れてついたもちのことで、草餅ともいいます。
 ゆでたヨモギの若葉をすりつぶし、餅につき入れたり、上新粉にねり込んで作ります。緑色で特有の香味があります。中に餡を入れたり、切餅にしたり、ひし形に切って雛祭の供え物にもします。
 蓬がもつ独特な強い香りは、古くから邪気を払う力があると信じられてきました。また、蓬の葉には各種ビタミン、ミネラル、食物繊維も豊富に含まれており、便秘や大腸がん予防にもよいとされています。
 道端や川の土手など、蓬はいたるところに生えています。散歩のついでなどに蓬の若葉を摘んできて、蓬餅を手作りしてみては。春の香りを存分に楽しめそうです。

茶趣・行事ごと

【お水取り】

お水取りは、奈良東大寺の二月堂で行われている仏教儀礼です。正しくは修二会(しゅにえ)といい、二月堂で十一面観音に日常の過ちを悔い、除災招福を祈願する法要です。実忠和尚によって奈良時代・天平勝宝4(752)年に始められてから、今日まで一度も途絶えることなく脈々と受け継がれてきました。3月1日から14日間にわたる修二会では、東大寺の僧たちが二月堂にこもり、厳しい修行を行います。
 一方、3月2日には福井県の小浜市にある神宮寺で、僧たちによって水を川に流す「お水送り」が行われます。この水が10日間かけて地下を流れ、二月堂の下の井戸に湧き上がる、と信じられてきました。この水をくみ上げる儀式が「お水取り」です。また期間中、二月堂で毎晩行なわれる「お松明」は、長さ約7mにもなる大松明を童子(どうじ)と呼ばれる人がかつぎ、その松明の火を道明かりとして行を勤める僧たちがお堂へ入っていきます。 夜毎、大きな松明(たいまつ)に火がともされ、参集した多くの人々をわかせます。このため「修二会」は「お水取り」・「お松明」とも呼ばれるようになったということです。
 特に関西の人々にとっては、この「お水取り」が終わるとようやく春が訪れる、と言われ、心待ちする行事となっています。

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