もも はじめてさく
啓蟄-桃始笑

新暦3月12日 から3月16日
公開日:2017年3月10日

 桃のつぼみがほころび、花が咲きだす頃のことです。「笑う」には「花のつぼみが開く」という意味もあります。
桃は昔から邪気を祓う神聖な植物とされてきました。『古事記』の中にもイザナギノミコトが黄泉(よみ)の国から帰るとき、桃の実を投げて雷神たちを追い払ったという話が登場します。また、桃は不老長寿をもたらす果実ともされ、中国で古くから信仰された仙女西王母は、三千年の齢を保つという桃の実を持っていたとか。さらに、中国の詩人陶淵明の「桃花源記」に描かれている「桃源郷」とは、桃林に囲まれた平和で豊かな別世界のことをいいます。
 桃の花が開くと、あたりも桃色のうららかな空気に包まれてきます。春の陽気に誘われて散歩に出かけたら、道端の草花を見ても思わず笑みがこぼれてしまう、そんな季節がやってきました。

茶の趣向・心配り

掛物

【桃花千歳春(とうかせんざいのはる)】【桃花笑春風(とうかしゅんぷうにえむ)】 【李花白桃花紅(りかはしろくとうかはくれない)】

 この時季、桃の花にちなんだ掛物もいいですね。
 「桃花千歳春」は桃の花が千年も変わらずに春が来たことを告げて咲いているという意味、また「桃花笑春風」 は桃の花が春風に誘われて咲いたという意味で、いずれも春の喜びがストレートに伝わってきます。「李花白桃花紅」は、すももの花は白くて美しく、桃の花は鮮やかな桃色で、これもまた美しい、という意味です。またこれには、ありのままが一番美しく、そのことが尊いのだ、という深い意味もあるのだそうです。

茶花、季節の植物

【花蘇芳(はなずおう)】

マメ科の落葉低木です。中国原産で日本には江戸時代に渡来しました。高さ3、4メートルになります。寒さにも耐える丈夫な木のため、古くから庭に植えられてきました。樹皮は暗灰色、葉は円いハート形で光沢があります。春、葉が出る前に枝の節々に紅紫色の蝶形花がかたまって咲きます。 この花の色が、同じマメ科の蘇芳の木から作った染料の色(蘇芳色)に似ていることから、この名がつけられたとか。
 茶花に利用するときは、花色が濃厚なので、つぼみや開花してすぐのものがいいかもしれませんね。

季節のお菓子、食べ物

【蕨餅(わらびもち)】

 蕨餅といえば、冷やしていただく夏の冷菓のイメージがありますが、その蕨餅をお饅頭の形にすると、早蕨の頃によく使われる茶菓の蕨餅となります。
 春の山菜の代表、蕨の根茎から取った澱粉質の粉が蕨粉です。葛粉に似ていますが風味に多少違いがあります。その蕨粉を水と砂糖で煮たのもを皮に、こし餡を丸く玉にしたものを包んでお饅頭を作ります。まわりには全体にきな粉を振り掛けて仕上げてあります。

 ほかにもこの季節には蕨にちなんだ茶菓子がいくつかあります。お干菓子の「早わらび」は青色の州浜(すはま)生地を1㎝幅に切って蕨の形に曲げたもの、また有平糖(あるへいとう)で蕨の形に作ったものなどもあり、いずれも春を感じさせるかわいらしいお菓子です。

  ・州浜……きな粉に砂糖、水あめなどを加えた生地で作った菓子。
  ・有平糖……室町末期にポルトガルから渡来したといわれる飴菓子。ガラス細工のようい硬質で透明感がある。

茶趣・行事ごと

【ホワイトデー】

  3月14日はホワイトデーですね。バレンタインデーの時にあれこれ迷った分、今回は何を頂けるのかしら、とひそかに期待を膨らませている女性も多いのでは。
  ホワイトデーは男性が女性に対して、2月14日のバレンタインデーに貰ったプレゼントのお返しを贈る日のことをいいます。バレンタインデーが欧米発祥の習慣であるのに対し、ホワイトデーは日本生まれの習慣で欧米ではみられないそうです。日本でホワイトデーが広く定着した背景には、日本にはもともと「贈り物を貰った場合にはお返しをする」という習慣が古くからあったことによるとのこと。
 その発祥についてはいくつか説があるようですが、福岡県の菓子店が発信したイベントに由来するとか、1978年(昭和53)に全国飴(あめ)菓子工業協同組合が販売促進のために考案した、という話がよく知られています。贈られるのは当初のマシュマロやクッキー、キャンデーなどのお菓子だけでなく、今では服飾雑貨やアクセサリー、食事や酒など幅広いものになってきています。でも、贈りもので一番大切なのは、物ではなく贈る気持ちであるということは、いつの時代も変わらないことですね。

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