なむし ちょうとなる
啓蟄-菜虫化蝶

新暦3月17日 から3月21日
公開日:2017年3月15日

 さなぎの姿で冬を越した蝶の幼虫が、羽化して飛び始める頃です。
 菜虫というのは大根・かぶ・白菜などの葉を食べる青虫のことで、紋白蝶(もんしろちょう)の幼虫が最も普通に見られます。紋白蝶は北海道から南西諸島まで全国的に分布している蝶です。はねの地色は白く、数個の黒紋があることから、紋のある白蝶という意味でこの名がつきました。寒冷地で年に2~3回、九州あたりの暖地では6~7回の世代交代を繰り返しますが、この時季は一番数が多いようです。幼虫の食草はアブラナ科、キャベツ、ダイコンなどの栽培種・野生種のほとんどすべてが食草となるそうですが、とくにキャベツを好むとか。
 またこの時季の蝶についてのことばには「初蝶」というものもあります。春の野で、その年一番最初に見かける蝶のことをいいます。

茶の趣向・心配り

香合

【荘子(そうし)】

 蝶をあしらった四角形の香合で、荘子の故事「胡蝶の夢」にちなんでこの名がつけられています。
 荘子はある夜の夢のなかで、蝶々になり空を飛んでいました。ふと目が覚めたとき、己が蝶になった夢を見ていたのか、それとも今の自分は蝶が見ている夢なのかわからなくなったといいます。なにものにもとらわれない荘子の思想をよく表した説話として有名です。
 香合としての荘子は蓋に胡蝶の文様があり、多くは四隅に花、四角い形状といった特徴をもっています。追善の席には最上の香合であるとされており、お彼岸があるこの時期には上手に取り入れたいあしらいです。

【菜種梅雨(なたねつゆ)】

 日本は雨天が多い土地柄故、雨を表す言葉が豊富です。“卯の花くたし”、“たけのこ梅雨”、“小夜時雨”などなど、日常では聞きなれないものも多いことでしょう。
 “菜種梅雨”は、3月から4月にかけての菜の花の季節に降る長雨の事。春の雨は花の開花を招くことから、花の名にもとづいた名が多くつけられています。華々しく明瞭な銘・言葉も良いですが、このようにそっと添えるような味わいの銘もまた趣深いものです。

茶花、季節の植物

【片栗(かたくり)】

 ユリ科の球根性多年草です。北海道や本州の山野や林の中に自生します。鱗茎は長楕円形で長さ 5cmぐらい,地中深くにあり、鱗茎からは良質のデンプンがとれます。これが片栗粉ですが、実際には片栗から取れる澱粉はごくわずかで高価なため、現在かたくり粉と称しているもののほとんどはジャガイモデンプンです。
 早春に高さ 20cmぐらいの花茎を出し、先端に1個の紅紫色の花を斜め下向きにつけます。 ユリに似た形の美しい花です。

茶趣・行事ごと

【生田神社献茶】

 生田神社は神戸市中央区にある神社で、稚日女尊(わかひるめのみこと)を祭っています。創建は神功皇后(じんぐうこうごう)元年(西暦201年)と「日本書紀」に記されている歴史ある神社です。
 3月16日に表千家と裏千家では、一年交代でこの祭神への献茶を行っています。

【大石忌(おおいしき)】

 3月20日には京都祇園(ぎおん)で大石良雄(おおいし・よしお)の法要、「大石忌」が行われます。
 大石忌は、歌舞伎の「仮名手本忠臣蔵」の七段目「祇園一力茶屋の場」で知られている、四条花見小路の角にあるお茶屋「一力亭」の行事です。
 大石良雄(1659~1703)は播磨(はりま)赤穂藩士で、浅野長矩(あさのながのり)の家老でした。通称の内蔵助(くらのすけ)の方が有名ですね。主君長矩の刃傷事件により浅野家断絶後、元禄15年(1702)12月14日、同志とともに江戸両国の吉良(きら)邸に討ち入り、主君の仇を討ちましたが、その後、幕府の命により切腹したのが翌年の2月4日でした。
 現在では毎年3月20日に一力亭で大石良雄追悼の茶席が設けられています。遺品や書き残した書画などが展示され、京舞も披露されます。また祇園の芸妓さん・舞妓さんたちによって抹茶や手打ちそばも振るまわれる、ということです。

【お彼岸(おひがん)】

 昼と夜の長さが等しくなる日が春分の日です。今年は3月20日ですね。この日は古来より自然に感謝し、春を祝う日とされてきました。法律では「自然をたたえ生物をいつくしむ日」として国民の祝日に定められています。この日を境に昼の時間が長くなっていきます。
 そして、春分の日の前後3日間を合わせた7日間が「春のお彼岸」です。日本ではこの期間に家族でお墓参りに入ったり、先祖供養をする習慣があります。私たちが住むこちらの世界は「此岸(しがん)」、そして仏教で西方にあるといわれている阿弥陀仏の極楽浄土は西の彼方の岸、彼岸です。春分の日は太陽が真東から昇り、真西に沈む日なので、西の彼方の極楽浄土に最も近づける日と信じられてきました。
 よく「暑さ寒さも彼岸まで」といわれるように、この頃になるとようやく気温も安定し、暦の上だけでなく体感としても春を感じられ、過ごしやすい季節になります。

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