さくら はじめてひらく
春分-桜始開

新暦3月27日 から3月31日
公開日:2017年3月25日

 桜の花が咲き始める頃のことです。
桜は古来より広く親しまれている、日本を代表する花ですね。桜の品種は沢山ありますが、かつて桜といえば山桜でした。 春に紅褐色の新葉とともに淡い紅色の五弁の花を開きます。 特に奈良県吉野山の山桜が有名で、和歌の題材とされ、多くの歌に詠まれてきました。
 現在多く植えられている品種は染井吉野ですが、これは江戸時代末期に江戸染井の植木職人が開発した園芸種です。染井吉野は成長が早く、花つきもよいため明治初期から日本各地に広まりました。葉が育つ前に花が一斉に咲き、美しく散る様は見事です。その散り際のよさが日本人の美意識をあらわすとして、人気になったともいわれています。
 良い陽気になってきました。何かとあわただしいこの時季ですが、そんなときだからこそ、今年の桜を愛でにお花見に出かけてみませんか。

茶の趣向・心配り

掛物

 その美しさによるのか、花を冠して桜を思わせる言葉はかなり豊富です。例えば「花開萬国春(はなひらくばんこくのはる)」「百花為誰開(ひゃっかたがためにひらく)」などはいかがでしょう。

【花開萬国春(はなひらくばんこくのはる)】

 春の訪れと共に、あらゆるところで花が咲き始めます。その麗らかでのどかな日々が永く続くよう祈る漢語です。また同時に、仏の悟りを得ることで得られる心持ちの妙妙たる様を表しているともされています。

【百花為誰開(ひゃっかたがためにひらく)】

 毎年春になると、花が開き咲きます。それは誰のためでもなく、何のためでもありません。それでも咲くのは、ただ“かくあるべし”という存在を以ってしてのものです。花が花として咲く姿、人が人として生きる姿は、ただそれだけで尊くありがたいものなのだという言葉です。

茶碗

【赤楽(あからく)茶碗】

 楽焼の一種です。楽焼とは京都の陶工の楽家代々の茶陶(茶道具として焼かれた器)のことをいいます。
 ろくろを使わずに手づくねで、鉄や竹のへら、小刀で削って成形し、内窯(うちがま)という小規模な窯で焼成します。楽焼のうち赤色みを帯びたものを赤楽といいます。赤土や白土の素地(きじ)に酸化鉄を含んだ黄土を塗り、透明釉を掛けて焼成します。抹茶の色との調和もよく、手に持った時の手触り、口当たりも柔らかいため、侘び茶の気分にふさわしいものとされています。

香合

【木魚】

 この候は利休忌もあるので、法要を思わせる香合などいかがでしょう。香合“木魚”はその名の通り、仏具のひとつである『木魚』の形をした香合となっています。そのため追善や法要、盆・彼岸などに用いると丁度良いでしょう。形状としては丸みのあるころんとした器に持ち手がついており、知らなければ鈴を模しているものかと見間違えてしまいそうな形状です。その名に入る“魚”や“鱗”の文様が入っている事も多いですね。
 ちなみに、仏具としての木魚は「眠気覚まし」のための道具です。かつて魚は瞬きをしないことから眠らないものと信じられており、読経の最中の眠気を覚ますために“木”で模した”魚”で音を出すようになったのだとか。『春眠暁を覚えず』ということわざもあります、春の眠りすぎには要注意です。

茶花、季節の植物

【菜の花】

 菜の花はアブラナの仲間の花の総称です。アブラナは種子から油が取れるので菜種(なたね)ともいいます。中国から渡来したとみられ、古くから栽培されてきましたが、現在、採油用に栽培されているのはセイヨウアブラナで別名蕓苔油菜(うんだいあぶらな)という品種です。切花用には縮緬白菜(ちりめんはくさい)の結球しないものを改良したものが多く栽培されています。
 のどかな春の日ざしを浴びて、あたり一面に菜の花の黄色いじゅうたんが広がる光景は、古くからなじみのある春の風物詩です。菜の花といえば与謝蕪村の「菜の花や月は東に日は西に」の名句が思い浮かび、のどかな気分に浸れます。
 また開花前のつぼみは食用にもなります。ビタミンCや鉄分、カルシウムなどが豊富に含まれていて、ほろ苦さ、香りを楽しむにはおひたしなどでいただきます。見ても食べても春を堪能できる花だといえるでしょう。

季節のお菓子、食べ物

この時季は、利休忌にちなんだ茶菓子はいかがでしょうか。

【菜花(さいか)きんとん】

 緑色のきんとんの上に、黄色のそぼろを散らしたもので、菜の花をかたどっています。茶の湯の菓子としては利休忌までは使わない習わしです。

【朧饅頭(おぼろまんじゅう)】

 薄皮饅頭を蒸し上げて、すぐに上皮をむいた饅頭です。春の朧月にみたてた中の餡がうっすらと見えます。千家で利休忌に用いられるお菓子です。

【菜花糖(さいかとう)】

 福井県鯖江市、大黒屋が製造・販売する銘菓です。煎った餅米に柚子の風味の砂糖をまぶしたあられ菓子で、鯖江藩主のお気に入りだったとか。ほどよい甘さで、そのまま食べても、熱湯を注いでもおいしくいただけます。色合いも形も菜の花に似たかわいらしいお菓子ですので、振出しに入れて茶箱手前で用いるのもいいかもしれません。

茶趣・行事ごと

【利休忌】

 侘び茶の大成者として知られる千利休が亡くなったのは天正19(1591)年2月28日でした。侘び茶とは茶の湯の一形式で、道具や調度の豪奢を排して、簡素静寂な境地を重んじます。村田珠光が始め、武野紹鴎(たけのじょうおう)を経て千利休が大成し、利休は千家流の開祖となっています。 利休は織田信長、豊臣秀吉に重用され絶大な権勢を誇りましたが、のちに秀吉により死を命じられ、自刃したのがこの日です。
 利休を偲ぶ利休忌は茶家最大の行事で、現在では新暦に直して3月に行われています。表千家では27日、裏千家と武者小路千家、薮内家では28日に催されます。また、三千家では毎月28日に交代で、利休の墓がある大徳寺聚光院で法要を行い、月釜を掛ける習いとなっています。
 利休忌には利休の画像または居士号を掛け、菜の花を供えます。炉には釣釜を掛け、台子飾りで家元が供茶します。なお、利休が自刃した際に菜の花が活けられていたという伝えから、利休忌までは茶席で菜の花は用いないのが一般的です。

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