しもやんで なえいずる
穀雨-霜止出苗

新暦4月26日 から4月30日
公開日:2017年4月25日

 霜の降りる心配もなくなり、苗代の稲の苗がすくすく成長する時季のことです。二十四節気の穀雨(こくう)の次候にあたるこの頃、穀物の成長を促す暖かい恵みの雨が大地を潤します。農家では苗代に種籾を蒔き、田植えの準備が始まっています。
 稲の苗を育てる苗床を苗代といいます。現在、稲の栽培はほとんどが苗代で苗を作り、それを移植する方法をとっています。移植栽培では、苗代で育てる苗の良し悪しが田んぼでの稲の生育や最終的な収量を左右するために、「苗半作(なえはんさく)」(良い苗を育てることは、収量の半分が保障されたようなものである)ともいわれるそうです。
 農家にとっては、この時季の苗代作りと苗の管理が、一年の中でもとても重要な作業となっているのですね。

茶の趣向・心配り

花入

【旅枕(たびまくら)】

 花入れの形の一つです。伊賀、信楽、備前、志野などによく見ることができます。
 細長い円筒形で、口作りは姥口になっています。この名は茶人が旅寝の小型の枕に見立てて名付けたとのことです。たいていの場合背面に穴をあけて、掛花入として使われます。

  ・姥口(うばくち)……器の口の形状の一つ。口の周囲が高く盛り上がり、口縁が肩より落ち込んでいるもの。歯の抜けた老女の口に似ているところからついた名称。

茶碗

【雲錦手(うんきんで)】

 桜と紅葉を描いた図柄のものをこのように呼びます。桜を雲、紅葉を錦に見立てており、真逆の季節の粋を詰め込んでいます。
 日本画の代表的な流派のひとつ、「琳派」の流れをくんでいる鮮やかな意匠です。なお琳派は大和絵を基盤としており、宗達の「風神雷神図屏風」のような金銀を大きくあしらった作品も多く生み出しています。その大胆さや間合いに高いデザイン性があり、相反する季節の代表を並べた雲錦手も、琳派の系統をとてもよく感じる大胆な柄です。

 例年、4月下旬のこの時季は、移動性の高気圧と低気圧が日本列島の上を交互に通過していくことが多く、天気はなかなか安定しません。「花曇り」「春雨」といった言葉もあるように、空気中に水分が多く、遠くがかすんで見える日もよくあります。そんな空気感の春の月夜のことを「朧夜」「朧月」といいます。「朧月」の銘の茶碗や「おぼろ饅頭」「朧月」の銘の菓子など、この頃によく使われる銘です。
 ぼんやりと月が霞んで見える春の夜の、やわらかな光をイメージした優雅な響きの言葉です。

茶花、季節の植物

【山吹(やまぶき)】

 日本では古くからよく知られ、山地にも自生するバラ科の落葉低木です。ヤマブキの語源は、山風に吹かれて揺れ動くたわわな枝ぶりから山振(やまふき)といわれ、それが山吹となったとか、他にも諸説あるようです。
 高さ1~1.5mくらいになり、幹ははじめ緑色で、古いものでは灰黒色にかわります。家の垣根や庭木、公園などによく植えられています。4~5月ころに直径4~5cmの花を開きます。5枚の花弁は、いわゆるやまぶき色の黄色です。小さな楕円形の果実がなり、はじめ緑色ですが、熟して乾くと褐色になります。  
 山吹は細い枝が伸びた形ですので、茶花としては籠花入や掛花入、また釣舟などを用いるとよく映えます。

季節のお菓子、食べ物

【浅蜊(あさり)】

 浅蜊はマルスダレガイ科の二枚貝で、淡水の流れ込む浅い海の砂泥底に生息しています。殻長約4㎝ほどで、殻の表は粗い布目状になっていて、その模様は変化に富んでいます。
 アサリは、その名が魚介類を探してとるという意味の「漁る(あさる)」からついたように、晩春から初夏にかけて潮干狩りの主役的存在です。
 栄養の特徴は、血液の粘度を下げ、動脈硬化を防いでくれるタウリンを豊富に含むことです。また鉄分も豊富で、さらに、鉄分の吸収を高める銅や、発育をうながして味覚や嗅覚を正常に保つ亜鉛も含まれるため、血行をよくし、つややかな肌を保たせたり、髪の枝毛や抜け毛を防いだりしてくれるとか。澄まし汁やみそ汁のほか、酒蒸し、パスタの具など、手軽にいろいろ楽しめる食材です。
 潮の干満の差が大きいこの時季は潮干狩りに最適な季節です。たくさん獲ったら、さらに磯の香りと味を家庭で楽しむのもいいですね。

茶趣・行事ごと

【孔子祭】

 毎年4月第4日曜日、儒教の祖・孔子を讃え、野菜を供える釋奠(せきてん)が東京の湯島聖堂で行われます。釋奠とは、古く中国で孔子をはじめとする先聖導師に、牛や羊などのいけにえを備えて祀ったことに始まった儀式で、現在の聖堂ではお酒、生鯉、野菜などを供えて孔子とその学問を顕彰しています。湯島の聖堂では4月ですが、佐賀県多久市の多久聖廟では春と秋の2回、孔子祭を行っているそうです。
 新年度がスタートした4月、新たに何かに挑戦しようとしている人は、聖堂にお参りして孔子に野菜を供え、知恵と学問をお祈りしてみるのもいいかもしれませんね。また、この日には孔子の知恵にあやかり、春野菜を食べると御利益があるのだとか。

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