かわず はじめてなく
立夏-蛙始鳴

新暦5月6日 から5月10日
公開日:2017年5月5日

 蛙(かえる)が鳴き始める頃のことです。かわずは蛙の別名です。
 田んぼに水がはられ、本格的に田植えが始まるこの時季になると、あちこちで蛙の鳴く声が聞こえるようになります。あぜ道や池の縁などを歩いていると、あわてて水に飛び込む蛙たちをよく見かけます。彼らにとっては恋の季節まっただ中、というところでしょうか。
 二十四節気では5月5日より立夏にはいり、暦の上ではもう夏ということになります。立夏とはしだいに夏めいてくるころのこと。けだるいほどの盛夏の頃とは違い、さわやかな風や緑の木々の香りなど、五月晴れという言葉がふさわしい、気持ちのいい季節の到来ですね。

茶の趣向・心配り

掛物

【薫風自南来(くんぷう みなみよりきたる)】

 この句は「薫風自南来 殿閣生微涼」(くんぷうみなみよりきたり、でんかくびりょうをしょうず)と対句になっています。春になり、南の方からかぐわしい風が吹いてくると、楼閣の部屋という部屋中に、実にさわやかな雰囲気が醸し出されてくる、という意味です。(『東坡集』 北宋時代を代表する文人、蘇軾(1036―1101)の詩文集より)
 風薫る五月にふさわしい掛物といえるのではないでしょうか。

香合

【鯉幟(こいのぼり)】

 この候は5月5日、端午の節句の時期でもあります。初夏の空を悠々と泳ぐ鯉幟も、香合の姿なると手のひらサイズで愛らしく思えますね。
 裏千家十四代淡々斎好みとしては、鯉型の桐材に朱塗掻合のもので、“鯉幟”の名の通り、横に泳ぐ鯉の形がユーモラスです。

 端午の節句にあわせると「粽」、「武者人形」、「長刀」、「竹馬」「武者揃」といったところが代表的でしょうか。どれも男児の成長を願う、力強い響きです。
 その他にもこの頃にしか使えない銘で、情景豊かでお奨めしたいのが「菖蒲太刀」です。これは端午の節句に行う遊びの名前で、菖蒲の葉っぱを束ねて太刀を模した“菖蒲太刀”を男児が腰に差します。この太刀姿で向かい合い地面を叩き、その音の大きさで優劣を競います。
 遊びであると同時に厄祓いとしての側面も持っており、菖蒲がバンバンと鳴る音で鬼(=邪気)がその周辺から去るとされています。5月に訪れる憂いを祓うためにも、このような銘にあやかってみてはいかがでしょう。

茶花、季節の植物

【鉄線(てっせん)】

キンポウゲ科のつる性木質多年草で、中国原産です。クレマチス属の代表種で、日本には寛文年間(1611~1673)に渡来し、観賞用に栽培されてきました。細長く伸びる蔓茎が針金のように強いため、鉄線の名が付いたとか。初夏、白または紫色で花びら状の萼(がく)を6枚もつ、径8㎝ほどの大形の花を開きます。
 茶花としては、蔓ものなので、掛花入、釣舟などに、ほかの花とバランスよく活けるのがよいでしょう。時節柄、菖蒲と合わせることも多いようです。

季節のお菓子、食べ物

【花菖蒲】【轡(くつわ)】【手綱(たづな)】

 この時季、端午の節句というと柏餅や粽が代表的ですが、主菓子では白餡を紫と白のこなしで包み、茶巾でしぼって作られる「花菖蒲」も趣があります。
 また、お干菓子では「轡」や「手綱」といった銘のものなどいかがでしょう。轡は馬の口に含ませて手綱を付ける道具です。轡は打物にその文様を表わし、手綱は紫と白の有平唐をより合わせて結んで作ります。どちらも男の子の誕生と成長を願う端午の節句にちなんだお菓子ですね。

【空豆(そらまめ)】

 北アフリカ、西南アジア原産のマメ科の野菜で、高さ約60㎝ほどになります。春、葉の付け根に白色または紫色の蝶の形をした花を開きます。種子を包むさやが空に向かって直立することから、空豆の名前が付いたということです。
 旬は4月から6月あたり。疲労感を和らげ、血管の若さを保ってくれるビタミンB群を多く含みますが、この栄養素は紫外線に弱いのでさや付きのものを購入しましょう。食物繊維も豊富ですから便秘改善にも効果的です。
 生の空豆は鮮度の低下が早く、「おいしいのは3日だけ」ともいわれています。さやの色が濃く、つやのいいものを選び、買ったらすぐに調理しましょう。塩ゆでしたりさやのまま焼いてビールのおつまみに、かき揚げやパスタの具にもいいですね。

茶趣・行事ごと

【初風炉(しょぶろ)】

 立夏を過ぎる頃から次第に夏めいてきます。この時季、茶の湯では席の装いを炉から風炉へと改めます。 もともと座敷に炉が切られる以前には一年を通して風炉が使われていましたが、のちに炉と風炉を使い分けるようになりました。現在では11月に開いた炉を4月末に炉塞ぎし、立夏が過ぎた頃に炉から風炉に改めますが、その当座のことを初風呂と呼び、茶事が行われます。
 炉と風炉とでは茶の趣が大きく変化します。たとえば、花入は炉では用いない籠が風炉ではよく見られますし、風炉の釜はやや小ぶりで、茶碗は多少浅めのものが好まれます。
 初風呂では道具のほかに花や懐石なども、さわやかな初夏らしい取り合わせを整え、風炉の季節が訪れたことを楽しみます。

【端午の節句】

 五節句の一つで、端午とは5月初めの5日を意味します。古代中国では5月に厄除けの蓬や菖蒲で門を飾り、邪気や疫病を祓う風習がありました。それが日本に伝わり、平安時代の宮中では菖蒲を天皇に献上し、臣下は薬玉を賜ったということです。
 近世以降、男児のいる家では鯉のぼりを立て、甲冑(かっちゅう)や武者人形を飾って祝うようになりました。現在は、「こどもの日」として国民の祝日になっています。

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